W.R.Case Russlock(アメリカの白髪の太っちょなおじいさん 作)
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仕事に忙殺された九月だった。
毎日夜中に帰って来て家でもぞもぞするだけで、
すぐに寝て起きて仕事に行く…という日が続いていた。
そんなある日のこと。その気持ちは不意にわき上がったのだった。

「ちょっと趣きのある、小さなmyナイフが欲しいなあ」

深夜に帰宅後、テーブルで過ごすのが唯一のオフタイム、みたいな状況で。
なのに葉書や手紙、郵便物を整理することに費やされることもしばしば。
封書を開けるときぐらい、仕事と同じカッターナイフは使いたく無いなぁと思ったのです。
それはもう、突然に。

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深夜五時にインターネットで調べた後、銀座に立ち寄って買ってきたのがこのポケットナイフ。
W.R.Case社のRusslock(ラスロック)という。

天然のスタッグ(鹿角)ハンドル、ボルスター(ハンドル両端の金属部分)は
ニッケルシルバーという、アーリーアメリカーンな100% MADE IN U.S.A。


 



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全長16cmぐらいでブレード長は7cmぐらい。
銀座の刃物店で様々なナイフに僕の手垢をつけてきたのだけれど、
机の上で使う小さなフォールディングナイフとはいえ、
しっくりくるサイズ感ってのは意外と限られていることを知る。
店主曰く、ブレード長は人差し指の長さぐらいが使いやすいんだってさ。

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購入にあたって希望した点はふたつ。
ますブレードを片手で開くことができて、かつ片手で閉じられる事。
僕が子供の頃、洋式ナイフではあまり一般的ではなかったと思うのだけど、
現在のフォールディングナイフ業界では重要視されてるっぽいのだ。

片手で開けられるからってどうなんだっていう話なのだけれど。
しかも小さなナイフを片手で開く姿は上品か??という疑問はあるけれど。
そう聞くと一度体験してみたいじゃないか。

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肥後守の「チキリ」のようなレバーで開く。
しかし、スリップジョイント(アーミーナイフのようなスプリングのあるもの)に、
ライナーロック(刃を仕舞うインナーを一枚バネにしてロックをかけるもの)を
組み合わせてるものだから、刃を開くのに割と力がいる。
コツさえつかめば問題ないのだけれど、はじめのうちは親指が少し痛かった。

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次に薄刃であること。
相手が紙であり、しかも封切りという目的においては薄刃に限るはずなのだ。
カッターナイフが優れてるのは材質が良いのではなく、刃が薄いことにこそあると思うのです。
で、コイツも微妙にしなりを感じる程の薄刃であり、
刃断面の最も厚い背の付近もほとんどの領域で2mm以下。

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薄刃である以上、素人考えでは強度が心配になるところだけれど、
材質は440Aステンレスというもの。
ナイフ鋼材としては比較的柔らかいものなんだそうな。
硬度は低いけれど粘りやすく割れにくい材質だそうで、
折れるよりはしなる方がよいってことなのかな。
店主曰く、そんなの焼き入れ次第だし、ココんちの焼き入れはしっかりしてるよ、
プライドを持って今でも昔と変わらずアメリカ国内でやってるからね。とのこと。

ちなみにロゴの“Case”の後ろの“xx”の文字は
二度焼き入れをした点検の刻印がモチーフらしい(笑。
まあ、昔と変わらない製法で向こうの職人さんが一つずつ作っているわけで、
改めて言うまでもなく、そんなに高性能なわけでは決して無い。

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ちなみにこちらの刻印の意味は“51”がスタッグハンドル、
“953L”がモデル名、“SS”はステンレス鋼。
Case社はライターのジッポー社傘下に吸収されてしまったらしいのだけど、
こういう刻印に拘るという文化はなるほどなと思う。
ちなみに前の写真のCass xxロゴの書体と、下のx印の数で製作年までわかるらしい。

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アメリカの職人さんが一本一本手で作っているというだけあって、個体差が激しい。
同じモデルのものでもハンドルの厚みや刃を開くときの固さなどがまちまちで、
その中から刃のピポッド部分が一番精度が出ているものを選んで来た。
中には刃を畳んだ時、刃がセンターに収まってないものまで在った。
おそるべし、アメリカのおじいさん。
(アメリカの職人さんと聞いて、勝手に白髪の太っちょな白人男性をイメージしてしまっています)
(そしてしわくちゃな赤ら顔で豪快に笑うのだ、きっと)

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さて、一ヶ月ばかり使ってますが使用感などの報告を。
想像通り、封を開くという作業においては抜群の使い勝手であります。
刃の先端が細いので封の隙間に潜らせて、すっと押すだけでするすると切れていく。
薄刃で鋭利なエッジを得やすいということに加え先端の繊細なアールも都合が良いのかもしれない。
断続的に紙に当たる角度が変わるので、力がよりフレッシュな刃の部分に受け渡されていく感じ。

しかし問題がないわけじゃない。
刃持ちがあまりよろしくない。気がする。欠けないで捲れる感じ。
あと、大きく力をかけようとは思えない。刃が薄すぎる。
それは所謂長所の裏返しなのでなんともいえないけれどね。

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刃物なんだから、切れ味が良くってなんぼの筈である。
参考の為にotoboke-yaさん私物のビクトリノックスとオピネルを借りて比較してみよう。

まずCASE ラスロックは箱から出した状態の刃付けの状態が酷い。
荒いグラインダーでざっくり角度だけ出しといたから、好きに研いでね状態である。
仕方が無いのでますは三本とも仕上げ砥石まで同等にあてた後、比較に入ることに。

ふむ。

このCASE ラスロック、物を切断する場合ビクトリノックスよりは切れ味が良いけれど、
オピネル(昔の炭素鋼モデルでNo.6)の方が切れ味そのものは良いのだ。
(オピネルはotoboke-yaさんの趣向で片刃ぎみに研がれているけれど、それを差し引いたって切れ味に勝るように感じる)
オピネルの6番って1000円ぐらいで買えたっけ?確か。
この場合、オピネルのコストパフォーマンスを讃えるべきか。
ちょっと水に濡れただけで、ハンドルが膨張して刃がしまいずらくなったり、
保管状態が悪いとあっという間に錆びてしまったりするけれども、
オピネルの、物に食いついていく感じや、乾いた切れ味は評価されてしかるべきだなぁ。

研ぎやすさはラスロックもオピネルも同じぐらいかな。感覚だけど。
刃が付きにくいってことはないからちゃんと研いで愛してあげれば、
440Aステンレスの錆びにくさ、ブレード形状の使いやすさ(紙に対してね)も手伝って
常にテーブルの上で活躍してくれそうに思う。
スタッグハンドルの黄色く飴色になるという、使い込んだ色を楽しみにしよう。


 
by la_nuavo_vespa | 2012-10-13 01:06 | GOODS
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